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丸井グループ社内報 Challenge World 4月号 Vol.403

新規事業から基幹事業へ躍進を続けるUP-Tの未来とは?

=丸井織物 専務取締役 宮本智行=

ロゴマークの刷新やTGC、丸井グループについてのインタビューをお届けします!

編集部(以下編):UP-Tを新規事業として始めたきっかけを教えてください。
智行(以下 智):そんなに深く考えていたわけではなくて、’15年のジュニアボードで何か新事業を作ろうくらいの感覚でした。

:Tシャツのプリントに至ったのは?
智:それも特に理由は無くて、ものづくり系のIT事業がいいかなと思って、一番簡単なのがTシャツでした。最初の売り上げは月6,000円です。

編:成長のターニングポイントは?
智:3つあって、一つ目はWeb広告を出したとき、二つ目はユーザーのデザインを販売するシステムを作ったとき、三つ目がテレビCMを始めたときかな。

編:軌道に乗るまではどうでしたか?
智:売り上げが爆増したのは一年後ぐらい。しっかりとリスティング広告を打ち始めてからですね。他にも色々ありますが、運が良かったんですかね。実は失敗したことがあまり無くて、何かやればどこかが伸びるんですよね。

編:新事業は確信があるのですか?
智:確信は1ミリも無いです。「これ成功するの?」と聞かれても「分からない」としか言えないです。役員会でもよく聞かれるんですけど、「上手くいかない可能性が高い」と答えています。それでやるなと言われたら「じゃあやりません」で終わります。

編:確信はなくても、運は味方すると?
智:運がひとつと、あと、自分を信用してないです。何が素晴らしいとか正しいとか、そういう基準があまりない。だめだと思ったらすぐに切り替えて、どんどん軌道修正をしていきます。

編:アイディアや発想はどこから?
智:世界で一番UP-Tを使っているから思いつくのかと。5分に1回はUP-Tを見てるので、バグにも気付きます。みんな何かを好きだとか言うけど、実際にはそこまで見れないと思うんです。でも僕は自分の仕事をずっと見ています。

編:すごい執念…好きなものを見続けて、ひらめきや気付きが出てくると。
智:全てこんな感じです。ただ興味ないことは全くやりません。色んな事業をやってきたことが背景にあるかもしれないけど、何かと何かを繋げるやってみようとか。あともう一つあって、パクることに躊躇が無いんですよ。

編:パクる!? 真似することですか?普通は躊躇することですよね。
智:上手くいっている人を真似したほうがいいかなって。よくないのは、中途半端に自分の色を出すこと。それをやっている人は大体失敗している。だから、突き詰めたら、その先は自分で考えます。

編:UP-Tはもう「パクる」ではなく、その先の段階なんですか?
智:『次は海外に売らなきゃ』っていう話が出てきます。だから越境ビジネスのECサイトのシステムを調べるために、アメリカへ行ってきました。
僕の言う「パクる」というのは、相手のことを全て知り尽くすことなんです。だから結構難しいんですよ。そのために海外まで行って「あんたのとこ時給なんぼなん?」とか失礼な質問もします。怒られるかもしれないけど、僕はその辺のリスク感覚があまりなくて。

編:ただの模倣ではなく、それを超えていく。
智:表面だけでは意味がないんです。ポイントが何かをしっかり分析や理解をした上で、本質的なものを徹底的に追求する。例えば、海外のオンデマンドビジネスに見た目を似せても、原価が高くてできないってなる。だから利益率やシステムがサイトの生産体制にどうつながっているかまで調べる。その上で原価構造どうなっているのか、どの様にマーケティングしていくべきか。さらに利益率を考えていく。

編:掘り下げて、分析して本質をつかむ。
智:僕は人よりも執念深し、誰よりも調べるし、行動力もあります。周りを調べないで自分は最強だとコアを分からずに失敗する事業家をたくさん見てきました。だから僕は恥をかいてでも最初にどんどん聞いて調べていく。ここ最近、日本人が得意な泥臭く汗をかく人が減ったなと思います。どの業界でも飛び込むことが必要なんじゃないかと。

編::UP-Tのロゴを刷新したのは目的があるからですか?
智:時代に合わなくなってきたなと思ったので。最初は「Tシャツを売る」というロゴだったのですが、今の目標に合わせました。Googleもシンプルなグローバルデザインになっている。海外進出やプラットフォームを見据えたデザインという要望を出しました。

>>>「名称とロゴ変更のお知らせーニュースリリース

編:様々なイベントや東京ガールズコレクション(TGC)に協賛しているのは?
智:特別に大きな理由があるわけじゃなくて、感覚的なところもあります。UP-Tの利益率は決まっていて、余剰の広告費が少しずつ出てきました。その中で、成長も含めて面白いんじゃないかと思えることをやっています。以前はアイドルフェスの末端だったけど、いまはイベントの冠ができるようになった。今年はそれぐらいの予算ができたね、という感覚です。

編:キャスティングや企画はUP-Tで考えているんですか?
智:そうですね、UP-Tで考えています。僕はアイドルが好きなので、アイドルのイベントを開催したい。でも利益がなかったら会社から駄目だと言われてしまう。だから企画から考えて次のイベントにつなげる。モデルとお仕事したら面白そうじゃないですか。なんか何か起こりそうじゃない?

編:感覚的なことを具現化すると思わぬことが起きる?
智:そうかもしれないです。TGCに出たら、来年は海外のコレクションにという話も来ました。一番のポイントは、色んな話が廻ってくること。チャンスを逃さない。自分なんてまだまだだからと閉じるのでは無くて、広げていくことが必要じゃないかと。TGCではひろゆきさんとも色々なことをお話しできて、そういうきっかけはとても大切なことだなと。最近はうちの課員もとりあえずやってみよう!という感じになってきました。UP-Tに対するプライドを持っているような気がします。

編::そのコミュニケーションとビジネスは関係しているんですか?
智:必ず仕事のことは考えています。何かしらUP-Tの役に立つとか、丸井織物のためにどうすべきかは当然考えています。面白くないとやりたくないタイプなので、だからこそ仕事と地続きにしていく。オリジナルTシャツを販売しながら、大変なイベントをやろうとしないと思うんですよ、普通は。ぜんぜん地続きじゃない(笑)。でも無理やり接着剤でくっつけて、地続きにすることもある。そういう仕事の作り方をいつも考えています。

編:新たに考えていることはありますか?
智:UP-Tの経済圏を考えています。プラットフォームの中でお金が回るという意味です。楽天には楽天ポイントという独自通貨があって経済圏が成り立っていますよね。UP-Tポイントで色々なサービスが受けられる、これはプラットフォームの最終型です。これには海外も入っていて、NFTだったり特典会ビジネスやライブ配信も開始しています。販売もイベントも全てが繋がっていくっていうのがUP-Tの経済圏です。

編:それがゴールなのですか?
智:ゴールではないですね。それはあまり定めてなくて。一つだけ言えるのは、ものづくりは中心に置き続けたいなって思っています。丸井織物はメーカーですし。

編:それも無意識の感覚なんですか?
智:いや、意識的です。やっぱり丸井グループだからです。それはもう当然です。丸井グループじゃなければUP-Tみたいなサービスやってないと思います。思想的な意味合いもありますけど、プロダクトをちゃんと生み出す、生産するということです。

編::ちょっと話をもどして、なぜアイドルが好きなんですか。
智:かわいいから!これは半分冗談ですけど(笑) 僕は中学生の時にちょっと辛い思いをして、引きこもりで友達もいなかったんです。もちろんモテたこともない。だからアイドルのイベントや特典会に行って、ありがとうって言われると素直に嬉しくて。やばい話になってますか!?

編::いえ、健全だと思います(笑)!
智:僕個人の意見としてですが、アイドル文化も他のカルチャーも日本ならでは。これを世界に輸出していくっていうことは、まだ可能性があると思っているんです。韓流とかのいわゆるプロフェッショナルな文化とはまた違う。クールジャパンとも違う。日本独自のものを現地に馴染ませるように少しずつ変えていけば、アジア圏でビジネスの可能性があるんじゃないかと思っています。
今あるブランドもほとんどそうで、ユニクロだってはじめから、あのブランドであったわけじゃない。頑なになるのではなく、変化させていくことも必要です。

編:UP-Tの開発や技術を織布に還元すると伺ったことがあります。
智:アプリやクラウドシステムで見える化していくことですね。それはすでに情報システム部がやっていて、織布のシステムはどんどんクラウド化しています。そういった技術の共有は必要だからやるっていうことでいいんじゃないかな。
僕がダメだと思うのは「シナジー、シナジー」と言って無理やり繋げようとすること。そうではなくて、必要だからやることが大切だと思うんです。
そしてシナジーが必然的に生まれたときに、それを実現できるような組織にしておくことの方が大切です。新しいことや大変なことを形にできることがポイントだと思います。

編:執着をもって掘り下げることは丸井グループの事業にも繋がりますか?
智:丸井グループは能動的なので、決められたことをどんどん掘り下げることは得意です。ただこれから先の時代はいまやっていることが本質から外れてくる可能性があります。だから客観的に第三者や他のビジネスに繋いでいくことができれば、繊維事業で新しい何かが生まれるかもしれない。そういった人材が増えてくれば丸井グループには可能性がたくさんあるし、もっともっと本質を深掘りしていけると思います。

 

会長の一言(編集部篇)

丸井織物 宮米織物 倉庫精練 代表取締役会長 宮本 徹

今月の「会長の一言」は、係長以上を対象に行われている会長講話「丸井イズム伝承研修会」を編集部がレポートします!

【實誠】【以和為貴】

皆さん、この漢字は読めますか? 研修会で重要な言葉として紹介されたものです。こちらは「誠実」と「和を以って貴しとなす」という言葉で、丸井織物初代社長の創業時からの想いとして後代に引きつがれており、経営のルーツとなっています。

 「誠実」…真摯に立ち向かう。やるべきことを全うすることからつながる信頼。現在の価値基準にも記されています。
 「和を以て貴しとなす」…相手を尊重し認めあい、協調して事を成す。皆でやっていくことが丸井の強みであり、これまでもずっと大切にしてきた考え方です。

 最近、会長がよく仰る「バラバラで一緒。様々な個性を持った人が集まり、活躍できるステージがある」に通じていると感じました。
「誠実」は丸井織物の厚生棟事務所に、「和を以て貴しとなす」はミーティングルームに今も掲げられています。
 変化の激しい時代ですが、このルーツは不変なものだと感じました。グループの一人ひとりが大切にしていきたい言葉です。