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SNSでバーチャル展示会 動画で特徴伝え、既存客に好評ー繊研新聞

 合繊織物製造の丸井織物(石川県中能登町)はSNSを活用したバーチャル展示会を今月末まで行っている。新型コロナウイルスの影響で合同展が中止されたが、代替案を模索。生地の風合いが伝わる動画など現場発で工夫し、評判も上々という。

 同社は素材メーカーや商社などからの委託生産が主力だが、テキスタイルの自販にも力を入れ、伸ばしている。特に年2回のプレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)の出展で新規開拓や既存客をフォローし、新作も企画してきた。

 5月に予定されていたPTJが中止となって即、代案を検討。企画担当など3人の若手を中心に、オンライン展示会としてコンテンツを作った。SNSの公式アカウントにアップした素材は今、ニーズの高いマスク用ガーゼのほか、綿やレーヨン調のポリエステル、ストレッチウールなど。得意の合繊に限らずに新作を見せ、動画でストレッチやドレープの様子など、できるだけ生地の特性を伝えるよう工夫した。

 既存客からの反応は想定以上で、インスタグラムでは2000人超が閲覧した。詳細への問い合わせも多い。31日までで、今後も新作を加える予定。

 SNSを利用しない層に向けても、子会社の倉庫精練(金沢市)に共同のショールームを設け、ウェブ上でも見本を見られる仕組みなどを検討している。

(2020.5.21/繊研新聞)

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2020年・新時代をどう生きるかー繊研新聞

進化続ける丸井織物
長期ビジョン策定し、世界への飛躍目指す
クロステック(X-Tech)で次世代事業創出へ

国内最大の織物メーカー、丸井織物(石川県中能登町)が進化を続けている。合繊長繊維織物を主力に、この間、受け身の委託ビジネスから主体的な企画提案による提案委託やテキスタイル自販へシフト。テクノロジーを駆使した生産システムの高度化や、オンデマンドのオリジナルTシャツEC事業なども軌道に乗せる。今年1月には長期経営ビジョン「Vision2030」及び中期経営計画「Next Stage-300」をスタート、世界への飛躍を目指し、一層のテクノロジー活用で次世代事業を創出していく。


織物工場


三つの“カクシン” 着実な成果に

 15年からの前中計「革新200」では、ものづくりとITの融合によって「業態」「製品」「技術」の三つの“カクシン”を目指したが、これが着実に進展。売り上げも順調に拡大し、最終年度を1年繰り上げて20年から次のステージに移る。この間、柱のテキスタイル事業では、商売形態は委託や自販などさまざまでも、自ら主体的に開発・提案したものが稼働の中心を占めるなどカクシンの手応えをつかむ。生産面では織機にセンサーを搭載するなどデジタル化、IoT(モノのインターネット)化を進め、生産性向上や開発のスピードアップを続ける。

集中モニターで生産状況を可視化

 IT事業ではオリジナルTシャツをオンラインで受注生産する「Up-T」(アップティー)を筆頭にオンデマンド型ビジネスが新規で成長、M&A(企業の合併・買収)で新しい分野、売り先も取り込みながら、スマホケース、ネイルなどへオンデマンド事業を続けている。

旧来ビジネスにIT活用、M&Aも継続

 このほど策定した長期ビジョンでは、30年に「世界に飛躍するカクシン・センイ・カンパニー」を目指し、20~24年の中期で新しいテクノロジーを取り入れたクロステック(X-Tech)による次世代ビジネスにつなげる。いずれも、若手社員らを中心にしたジュニアボードが半年強の議論を経て策定し、原点の“織り”をコアに据えつつ、将来の事業環境の変化を見据えた。
 数値目標は最終年度に売上高300億円(19年度約190億円見込み)と、環境が変化するなかでも着実に成長し、より高収益や事業体を目指す。

 基本戦略は衣料、産業資材、IT・新規事業の三つで策定。衣料は物作りにおけるITの活用を引き続き進め、北陸産地をはじめとする同業(水平)や前後工程(垂直)との多様な連携を強化する。
 産業資材は、現状の限られた分野からさまざまな新規用途開拓を狙い、そのための専門組織立ち上げも計画する。
 IT・新規は18年に子会社化したオリジナルラボを核にサイトの認知を高め、オリジナルグッズの展開を広げていく。得意のSEO(検索エンジン最適化)技術を生かし、旧来ビジネスにITを活用することで再構築できるような分野への参入を狙い、M&Aも視野に入れる。

Up-T工場

カスタマイズTシャツが軌道に
オンデマンド事業で横展開

 織物製造を本業とする丸井織物だが、ITを活用した新規事業に挑み、なかでもプリントTシャツなどのオンデマンド事業は国内屈指の規模に成長している。オンライン受注生産のプラットフォームを生かし、スマホケース、ネイル、似顔絵といったサービスにも広げている。
 カスタマイズTシャツを販売する「Up-T」(アップティー)をスタートしたのは15年。パソコンやスマホなどからユーザーが簡単にオリジナルTシャツのデザインができ、サークルのユニフォームやイベントグッズなどのほか、クリエイターの服作りも支援する。自社で受注~プリント~発送の仕組みを構築し、1枚から3営業日で発送という少量短納期のサービスが売り。

増設したプリンター

 18年には同様の販売サイトを運営していたオリジナルラボを子会社にし、出口も拡大。Tシャツ以外に、バッグ、はっぴ、タオル、スマホケース、マグカップ、ネイルなどアイテムを広げ、オンデマンドのビジネスモデルを横展開している。また、全国のグラフィックアーティストらと契約し、オリジナルの似顔絵イラストを受けるサービスも始めている。

 プリント事業の拠点は、本社近くにあり、かつて小学校だった廃校跡だ。この中にTシャツ用のインクジェットプリンターは27台まで増え、スマホケース用プリンターなども含めると計42台を揃える。日本屈指のデジタル工場は、日本中の消費者とオンラインで結ばれ、さまざまなアイテムのプリントを日々、受注する。
 次は海外市場への進出を検討しており、越境ECサービスの準備を進めている。

丸井織物株式会社 代表取締役社長 宮本 好雄

(2020.2.21/繊研新聞)

服好きの反対側を攻めるー繊研新聞

「毎日着たくなる服」はどう生まれたか--
 丸井織物×オールユアーズ

 合繊織物を主力に織機1,000台超を保有する国内最大の織物メーカー、丸井織物。“ライフスペックウェア”をコンセプトに、「毎日着たくなる服」を手掛ける気鋭のアパレル企画会社、オールユアーズ。今では資本関係も結ぶ両社は、「服好きじゃない人」の市場に成長の可能性を見いだした。ニーズを捉え、シンプルなデザインで実現し、効果的に発信することで、着実に支持を集めている。丸井織物の宮本淳二営業第二部部長兼東京営業所長、オールユアーズの原康人代表取締役兼ライフスペックディレクターに対談してもらった。


左から宮本氏、原氏


服のストレスから解放

-両社が共同開発したセットアップがオールユアーズの主力商品に。ウールに見えるポリエステル100%で、乾きやすさや伸び縮みする特徴を発信した。

 丸井織物の生地を使ったもので、クラウドファンディングの24ヶ月連続企画では、売上の過半を占めました。僕らに求められるものがよく分かったので、商品を絞り、今後も深堀りしていきます。働き方が変わり、働くときに着る服も変わっていくと思います。ワークウェアがスーツであることに不満や疑問を感じる人や、ジャケットを羽織ればいい職場が増えてきました。

-フリーランスやIT系など、服装の自由度の高い職種の人から支持されている。

宮本 一度気に入ると、たくさん買ってくれます。動機はトレンドではなく、好きか嫌いか。自分の考えに合ったブランドがあれば、使い続ける市場が生まれています。

 極端に効率を求めますからね。その人たちにとって服は基本面倒なもの。買いに行くのもそうですし、重かったり、伸びない服は着たくない。洗濯も面倒だし、乾くのを待つのも嫌。毎日着る服を選ぶのも煩わしい。そんなストレスがない服を目指しています。

宮本 欲しいのは、見た目が良くて楽に着られるもの。(IT化などで)職種とその就業者数も変わっていくなか、人口は減ってもその市場は大きくなると思います。

 服好きではないが、無頓着でもない。自分に合うものが見つかれば2万円でも買う。こだわるところが違うだけです。

シンプルを追求

-生地を重視している。

 形をとてもシンプルにしているので、生地がほぼ全て。加えて、僕らの企画はコンセプトを立てる普通のデザインと違い、問題解決が起点なので、答えが一択しかないんです。

宮本 その一択にこたえる生地を開発するには、あらゆる知識を動員しないといけない。シンプルゆえに難しい。例えば、速く乾く商品なら、水分を速く拡散できる構造を糸や生地設計で作るのですが、天然繊維のように見栄えのいいものにするには、糸の材質から考えないといけない。合繊だけを知っている人間では解決できない。丸井織物は、綿を中心とした先染め織物を長年手掛けてきた人と契約し、彼の目で仕上がりを確認してもらっています。

企画と生地開発で生活者に寄り添う

 シンプルな中で差別化しないといけない。綿の先染め織物に見えるポリエステルは、完成に8年を要しました。綿と遜色なく、合繊っぽい要素もあってちょっと違う。そのわずかな違いを若い子の方が感じてくれます。

-丸井織物の自社販売生地ブランド「ノトクオリティー」は、原さんも企画に入ってから「超寿命機能素材」を訴求している。

 長く使うと2枚めを買ってもらえないと言われますが、それは逆。「よかったからもう1枚買おう」が一般生活者の感覚です。僕らの商品は、買った後も含めてデザインしています。

宮本 ノトクオリティーもそこがコンセプトです。

 僕らの商品は10品番だけ。売り上げの7割が3年以上販売している商品です。生地もニーズを的確に捉えていれば、同じものを売り続けていいと思います。色や柄はブランドによって変えればいい。刺身がうまければ、料理の仕方が何パターンもあるということです。今はブランドが生地に売り文句を求めすぎているのではないでしょうか。

(2019.12.26/橋口侑佳様)